複勝は1着なら高くなる?オッズの幅を決める「一緒に入る馬」
複勝の欄に「2.0〜3.0倍」。この馬が1着なら3.0倍、3着なら2.0倍なのだろうか。
複勝に、1着への上乗せはありません。同じ投票内容で、複勝の的中対象になる馬の顔ぶれも同じなら、その中の着順を入れ替えても各馬の払戻金は変わりません。
では、なぜ一つの数字でなく幅が出るのか。自分が選んだ馬だけでなく、一緒に的中対象になる馬によって、払戻しの計算に使う投票額が変わるからです。
ここを分けておくと、「勝ちそうだから複勝の上限で計算する」「幅の真ん中が平均的な配当だろう」といった読み違いを減らせます。
最初にそろえるのは、複勝の的中条件
JRAの複勝は、指定した1頭が対象の着順に入れば的中する馬券です。発売開始時の出走予定馬が8頭以上なら3着まで、5〜7頭なら2着までが対象です。4頭以下では発売されません。JRAの馬券の種類と馬券のルールで確認できます。
この記事では、発売開始時8頭以上で、同着・出走取消などがないレースを考えます。3頭が複勝の的中対象になる場面に絞るためです。
ここでいう「的中馬」は、レースの勝ち馬だけを指しません。1〜3着の3頭を指します。自分がA馬の複勝を選んでいれば、A馬がその3頭に入ったときに的中です。
A馬が1着でも3着でも、同じ顔ぶれなら払戻しは同じ
まず、着順の違いだけを取り出してみましょう。投票の内容を変えず、次の二つの結果を比べます。
- 結果①:1着A馬、2着B馬、3着C馬
- 結果②:1着C馬、2着B馬、3着A馬
A馬は①で1着、②で3着です。それでも複勝の的中対象は、どちらもA・B・Cの3頭。各馬に投票された額も変えていないので、A馬の複勝100円あたりの払戻金は同じになります。

この比較で固定したのは、投票内容と、的中する3頭の顔ぶれです。A馬が別のレースで1着と3着になったときも同額、という話ではありません。
また、同じレースでA・B・Cの複勝がすべて同じ金額になるわけでもありません。各馬に集まった投票額が違えば、100円あたりの払戻しも違います。「A馬自身の着順を入れ替える話」と「別の馬の払戻しを比べる話」は、分けて読んでください。
JRA-VANの複勝解説でも、1着になったこと自体で複勝の払戻金が高くなるわけではないと説明されています。
払戻しを動かすのは、一緒に入る馬の投票額
次は、A馬と一緒に3着以内へ入る2頭を変えてみます。
- A・B・Cが的中する場合
- A・D・Eが的中する場合
A馬はどちらでも的中します。しかし、B・Cへの複勝投票が多く、D・Eへの複勝投票が少なければ、計算に入るお金の内訳は同じではありません。
仕組みをたどると分かりやすくなります。複勝の払戻しでは、的中しなかった馬への投票額も計算に使います。同じ発売総額でも、的中する馬の顔ぶれが変われば、外れた馬への投票額の合計が変わるのです。
A馬以外の的中2頭への投票額が少ない組合せほど、ほかの条件が同じなら、A馬の払戻しは大きくなる方向に動きます。 端数処理などにより、差があっても最終の金額が同じになる場合はあります。
「人気薄が来ると複勝が上がる」と聞くことがあるのは、この関係からです。ただし、ここで見るのは複勝として集まった投票額。単勝の人気順だけで、複勝の計算を確定することはできません。
計算式で確かめると、着順の項目はない
JRAの払戻計算式では、各的中馬についての払戻対象総額を、次の要素で求めます。
- W:その的中馬への投票額
- D:的中しなかった馬への投票額の合計
- P:的中馬の数
- R:その券種の設定払戻率
式は (W+D÷P)×R。通常の複勝の設定払戻率は80%です。この記事の条件では的中馬が3頭なので、Pは3になります。これをその馬の的中票の金額に応じて配分するため、同じ的中馬でも投票額の違いが払戻しに関係します。
A馬の投票額Wが同じでも、同時に的中する馬が変わればDが変わる。逆に、的中馬の顔ぶれが同じで、着順だけ変わってもW・D・P・Rは変わらない。この違いが、先ほどの二つの比較の理由です。
この式は通常の仕組みを確認するためのものです。実際の払戻額には端数処理等があるため、画面の金額を自分で丸め直さず、JRAが発表する払戻金を確認してください。
「2.0〜3.0倍」は、同時に的中する馬による幅
例として、A馬の複勝が「2.0〜3.0倍」と表示されていたとします。
この幅は、表示時点の投票内容で、A馬と一緒にどの馬が的中対象になるかによって生じる、払戻倍率の下限と上限を表します。A馬の1着用・2着用・3着用の価格表ではありません。JRA-VANの「複勝のオッズには幅がある」が対応する説明です。
100円分なら、2.0倍は払戻し200円、3.0倍は払戻し300円に対応します。払戻しには元の100円も含まれますから、この場合の差引きはそれぞれ+100円、+200円です。
ただし、幅の真ん中の2.5倍を、そのまま「平均的に戻る倍率」と置くことはできません。両端が分かっても、どの的中馬の組合せがどれくらい起こりそうかは分からないからです。
例えば、安い側になる組合せが起こりやすいと考えているなら、単純に真ん中を使うと払戻しの見込みを高く置いてしまうかもしれません。複勝の期待値を考えるときには、A馬が入る可能性と、A馬が入ったときの払戻しの見込みをつなげる必要があります。上限だけでは、その判断はできません。
単勝で「的中したときの倍率」と「的中する確率」を分ける考え方は、単勝4倍と6倍を比べた記事でも説明しています。複勝では、さらに一緒に入る馬によって払戻しが変わる点が加わります。
購入前の下限と、確定した払戻金を分ける
幅を読むときに、もう一つ残しておきたい情報がそのオッズを見た時刻です。
投票が続いている間は、各馬に集まる額も変わります。したがって、途中で見た「2.0〜3.0倍」の2.0倍は、購入後も保証される最低払戻倍率ではありません。最終の投票内容に変われば、幅自体が動きます。
ここには別々の変化があります。
- 投票が増えることで、表示されるオッズの幅が動く。
- レースの結果によって的中する馬が決まり、払戻金が確定する。
「一緒に入る馬がまだ分からないこと」と「まだ投票が終わっていないこと」を一つにしないのがコツです。また同着時には、発表された最終オッズと異なる率による払戻しになることがあります。これはJRAの馬券のルールで示されており、通常の3頭で考えた今回の例とは分けて扱います。
次に複勝欄を開いたら、三つだけ確認する
複勝オッズの読み方を整理すると、確認先は明確です。
- 対象の着順:発売開始時の頭数から、2着までか3着までかを確認する。
- 幅と時刻:上限だけを抜き出さず、下限・上限・表示時点を一緒に読む。
- 確定後の顔ぶれ:自分の馬の着順だけでなく、ほかにどの馬が複勝の的中対象になったかを見る。
レース後に複勝の払戻しを振り返るときも、「A馬が勝ったのに安かった」で止めず、一緒に入った2頭まで確認すると、結果の読み方が変わります。
複勝は、着順の高さへのご褒美ではありません。自分の馬が対象に入るかと、そのときどんな払戻しになるかを分けて考える馬券です。
参考資料
- JRA:馬券の種類 — 複勝の的中条件。
- JRA:馬券のルール — 発売開始時の頭数、同着時の扱い。
- JRA:具体的な払戻計算式 — 投票額と的中馬の数を用いる計算。
- JRA-VAN:競馬の複勝とは? — 着順による上乗せがないこと、オッズの幅。
確認日:2026年9月20日。
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